D2版「TRAMP」Revers

 昨日に引き続き「TRAMP」です。
 TRAMPという舞台は対となる人物を逆転させたRevers版があるのですが、役柄へのアプロ―チの違いや、台詞も少し変わっています。
 今回はこっちについての感想。

 以下ネタバレ含みます。
 LILIUM、Specter、グランギニョルマリーゴールドのネタバレも含みますのでご注意ください。

 
 Reversの感想に入る前に、公演の際にTruth/Reversを交互に上演していたが、それはラストのウルのソフィに向けた「生まれ変わったら君になりたいな……」という台詞を受けての、転生バージョンとして交互に上演だったと知りひゃーとなったのですが。更に大千秋楽ではもう次の公演がないから、ソフィとウルの輪廻転生も終わりということで、ラストの台詞が「生まれ変わったら君に……」と最後まで言わずに終わると聞いて、うおおおおおお、ってなりました。
 TRAMPはTRAMPだけでも一つの作品なのですね。シリーズとして考えるのではなくて、1つの舞台のとしても完結度の高さに戦慄しました。

 では感想に入ります。


D2版「TRAMP」Revers

ラファエロよく言ったという気持ち
 ウルの秘密が露呈してから、ダリ様はラファエロに「お前には失望した」と告げる。どう考えてもラファエロのせいではないじゃないか、ウルが自ら告げたんじゃないか、と思うのだが、でもダリ様が責めるのはウルではなくてラファエロなんだよね……。
 そして、このときTruthのラファエロは何も言い返さなくて沈黙なのです。一方でReversのラファエロは「あなたがまいた種じゃないですか」と言い返す。私は思わずよく言った! とこぶしを握った。この時点では、その台詞は見ている私の代弁でもある。ダリ様、あんまりじゃないか、ラファエロ悪くないじゃないかという思いへの意趣返しをラファエロ本人が言ってくれたことにすっとした。ありがとう。ってなる。
 ただグランギニョルのこととか考えると、やっぱりダリ様は言ってないのか……ダリ様肝心なこと言えないから(フリーダ様にも「愛している」とは言えないまま言葉を切って終わるぐらいですし)、フリーダ様にウルのことも頼むと言われた以上は、それを全うしようとした結果、ウルを施設に送ることはできないと考えて実子として育てると決めた。そう決めたから、ウルは自分の子と周知させた。ところがウルは身体が弱く、ダンピールであると当然バレる。その時も説明しなかったのではないかな。周囲が憶測して、実子というからにはダリ様の血は入っている、つまり人間の女との子どもだろう考えているだけで、特にダリ様には確かめていない気もする。嘘をついたというより、黙っているから誤解されている状態? そうなのだとして、言えよーと思わなくはないけど。この辺はCOCOONで描かれるかな?

 

クラウスについて
 Truthのクラウスは謎。よくわからなかったのだけれど、Reversを見てこちらのクラウスは少し理解できたような気がする。
 とかく容姿がひどい。何故そんな似合わない眼鏡を……と思えるようなもっさい感じなのだが、最後に眼鏡をはずして登場したときのイケメンすぎるご尊顔を見た時に、あーっとつながったものがある。
 クラウスはすべての吸血種のイニシアチブを掌握しており、かつて寂しさを紛らわせるために永遠の命を持つ吸血種も作ったのだが、永遠の命を求める人間との間に戦争が起きるまでに発展し、永遠の命を持つ吸血種を消し去った。争いを止めるために仕方ない? クラウスがそこまで人間を守ろうとする理由はないように思う。人間を皆殺しにして永遠の命を持つ吸血種だけで楽園を作ろうという考えになってもおかしくはない。なのに、そうはならなかったのは何故か。ひとえに、いくら永遠の命を持つ吸血種を産んでも、クラウスは一人だったからではないか。彼らのイニシアチブを握っている以上、彼らはクラウスに逆らわない。下手をすれば自分の命がなくなる恐れがあるからだ。媚へつらう者もいただろう。クラウスは悟る。永遠の命を与えたところで、自分の特異性は変わらない。そういう気持ちもあり、彼はどうせ孤独ならば大勢の中での孤独より、一人きりの孤独を選んだのかもしれない。だから彼は、それからの日々を目立たないように、自分がTRAMPであることを悟られないように過ごすことにした。バレたら、自分に媚びる者たちがまたでてくるかもしれないから。そんなのはもう御免と。
 だから、似合わない眼鏡、もさっとした感じも、カムフラージュだったのではないかと、そうだっとしたらしっくりくる。あのもさっとした感じの、ちょっと風変わりなどちっ子なら、馬鹿にされることはあっても、媚びてくる者などいない。クラウスはそちらの方がよいとした。
 ところが、である。アレンはそんなクラウスにも色気を振りまいてしまった。Reversのアレンは色気むんむんのチャラ男っぽい風貌なのですよね。うわーこれはあかんやつやー、なんだこの色男ー、と思いましたよ。そんな色男にまるで友人のように接せられた日には……憧れを抱く。そりゃ落ちますわね。クラウスとアレンの間にあるものを私にはBL的に解釈しずらいので、愛は愛でも友愛だと思うのだが。こんなもっさりした自分を馬鹿にするでも避けるでもなく対等に見て(先生と生徒という関係なのに対等いうのがすでにレアだよね(笑))、もっと我儘になった方がいい、なんて言ってくれるアレンへの友愛の情を感じてしまうのは仕方ない。これはもう、仕方なかったんだ。
 クラウスがアレンの死にゆく際に「あなたと友だちになりたかった」っていう台詞がある。あの台詞、Rverseのクラウスとアレンに関しては二人の間に齟齬があるように思う。つまり、アレンはクラウスを友だちと思っていたのではないかと感じるのだ。クラウスが「友だち」というものを知らないばかりに、或いは、ずっとは一緒にいられないけれど定められた命が燃え尽きるまでということを受け入れて友人関係を築くような心の在り方を会得していれば、アレンを友だちと認識できていれば、アレンの方は友だちと思ってくれていたように思う。でもクラウスは「友だちになりたかった」というのだ。つまり「友だちになれていない」とクラウス自身は思っているのがすごくつらい。Truthの不思議ちゃんアレンは確かにどう友だちになればいいのか、というかこのわけのわからない子と友だちになりたいと思うクラウスも大概だなと思っちゃう部分もあったんだけど(ごめんなさい)、Reversアレンと友だちになりたいって思ったクラウスの気持ちはわかるし、いや、友だちだったじゃん、とも思う。それをクラウスは友だちとは言わず、友だちになりたかった、というのが切ない。……と考えた時、ソフィはウルに殺されそうになったとき「君は友だちだ」だって言っているのを思い出した。そうか、ソフィはウルにツンツンしてたけど、ちゃんと友だちと思っていたと、そうであることを告げたんだっていうのが泣ける。クラウス……アレンの最後に、君は僕の友だちだから助けたい、と言っていたら、Reversのアレンなら何か言葉を返してくれたのではないか。そんな妄想をしてしまう。

 


クラウスのソフィに向ける狂気について
 永遠の命を与えられたソフィが発狂してクラウスをめった刺しにするところ。これTruthとRverseで台詞が違う。Tの方は襲い掛かってくるソフィを抱きしめながら「星に手が届いたよ、アレン」と遠い目をしてアレンに語りかける。クラウスが何故そこまでアレンに固執するのかTの方ではまだ私は噛み砕けてはいないのだが(ひょっとしてそれが特別であるってことなのかもしれないけど。他人には理解できないけどクラウスにはアレンしかダメというどうしようもない特別感)、その執着の強さだけは感じていて、このシーンでなおそれが浮き彫りになる。ソフィに残酷な仕打ちをしたのに、ソフィではなく彼が見つめる先はアレンなんだという……。悲しい。それはとても悲しい光景だった。一方Rの方は「そんなに怒らなくてもいいじゃないか」とソフィに笑う。めっちゃ怖い。ここマジで狂気すぎて怖い。え? ってなった。これはかつて永遠の命を授けた吸血種を消したクラウスと繋がるクラウスですわ。自分のためにやっちまえるやつやー。私はここで初めて、クラウスの怖さを知った。Tのクラウスは謎、永遠を生きる真なる吸血種が何を感がているかなんてわからなくて当然なのでそれはそれですごいなって思っていたのだが、Rのこの狂気を見てクラウスに対する畏怖を周囲の吸血種が感じていたのではないか、機嫌を損ねないように媚びたりしていたのではないかという推測が真実味を得た感じがした。これは、なかなかお友だちはできませんわ……どんなきっかけで豹変するのかわからないし、そしてその豹変で自分をあっさり消し去ることもできるのだから。
 クラウス……Tのクラウスのまともさというか、ソフィを守るためにラファエロや他の者を消したことは冷酷であるが、彼には彼なりの理屈があってのことで、むやみやたらに気に入らないからするわけではないという妙な安心、理性はあるのではないかと思えるところがあったが、Rのクラウスはそれがないなっていうね……怖い。怖い。怖い。Tのクラウスとなら長い永遠を生きる間に何かしらの共通点が芽生えて、ひょっとしたらクラウスへの同情を感じて、再会して和解も可能かもしれないなんて僅かながらも甘いことを考えられなくもないかな? と思ったが、Rのクラウスとの和解はないだろうって思っちゃった。。。うーむ。

 

変更点としてしっくりきた
 大詰め部分で、ウルがクラウスに永遠の命をくれと告げて、クラウスがウルに近づいていくシーン。「ウルに何かしてみろ、僕が許さないぞ」とウルを心配する声を上げるのがTではガ・バンリで、Rではソフィなのだよね。で、正直ガ・バンリが言っても不死者相手に何もできないわけで(ぶっちゃけね)、気持ちとしてはわかるけど、あなたに許されなくても構いませんで終わってしまうなぁと思っちゃったのである。結局あの時クラウスは棒立ちで呆然としていて何もしなかったんだけど、抑止力としてはあまり力がないなって。すみません、よく確認したらこちらもソフィが言ってました。寝ころんだままだったのと遠巻きの映像だったので、後のガ・バンリが言っていると勘違いを……。Rの方のソフィは起き上がっているのでわかりやすかったので変更なっていると思ってした。以下は誤解していた時の、衝撃感想ですがせっかくなので掲載しておきます。→  一方でRのソフィが放つそれは威力が違う。ソフィに言われた後、ああ……と泣きそうなクラウスに、あの時ばかりは苦しくなった。なんか、可哀想で可哀想でたまらない気持ち。アレンはさ、アレンがメリーベルに会いに行きたいといったとき、クラウスが反対したことに対して、「我儘言えるようになったじゃないか」と受け入れてくれたが、ソフィはウルを優先してクラウスに許さないっていうのが、ああ私を許してくれないのか、っていう見捨てられた気持ちになっている感じがしてたまらなくなったんだよ、、、ソフィ、ひどいよって、全然ひどくないし、ウルを助けるためは当然の牽制なんだけど。あのあたりが、見ていて気持ちがぐちゃぐちゃになってすごくよかったです。
 

 全体的な感想として、Reversの方がわかりやすいというか、私には解釈しやすかった。この舞台一つで完結した作品という解釈は立てやすかった。これをTRAMPシリーズとして見た場合なら、Truthの方が不明点というか空白の部分が先へ先へとつながっていくという風に感じられてよいかなと思いました。