舞台「PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」ライブビューイング

観てきました。
生まれて初めてのライブビューイングでどんなものだろうとわくわくしていましたが面白かったです。でも、やっぱり生で見たかったなぁ(笑)

PSYCHO-PASSといえばアニメが1期、2期、劇場版とあり、今年に3期アニメの作成も決まり、動きが活発になってきて喜ばしい限りだが、舞台版は「公安局刑事課3係」を中心に展開されるオリジナルストーリーである。(ちょろっとアニメの事件の名前が出てきたりする)

以下感想。ネタバレ含みますのでご注意ください。

 

舞台版は、二人の監視官 九泉晴人と嘉納火炉 の物語である。


PSYCHO-PASSは「シビュラシステム」に管理された世界である。人々の心理状態や性格傾向は「サイコパス」と呼ばれる数値に置き換えられている。その中でも「犯罪係数」という犯罪に関する数値が重要視され、これが規定値を超えると犯罪を犯していなくても「潜在犯」として隔離施設に送られる。
何もしていなくても、犯罪者扱い。
彼らの人権は? 
アニメ版でもずっと繰り返し描写されてはきたが、今回の物語で潜在犯への非人道的扱いがより浮き彫りになる。
シビュラは、潜在犯を使い「実験」を行ったのだ。
偽りの記憶を植え付け、人為的に作り上げられた監視官=九泉晴人
サイコパスを偽造して、監視官に仕立て上げられた人物=嘉納火炉
実験の結果、公安局刑事課3係は「壊滅」。皆、死亡して終わる。
シビュラは、この一連の出来事を悪意なくする。
「最大多数の最大幸福」のため、何の躊躇いもなく。
「シビュラは悪ではないが悪質だ」――嘉納の劇中の台詞だが、これに尽きる。

九泉の本当の人格はどうであったのか?
すべてがわかったあと思い返せば、確かに九泉の性格はおかしい。
おかしいというか……この世界では、職業診断もシュビラが行い、公安局に入局できるのはシュビラが超優秀と判断した人物のはず。そして、その超優秀な人間として監視官となった人々(アニメ版の監視官たち)は、その通り、冷静沈着で頭の切れる人物であった。だが、九泉はどうもその人物像からは離れている。感情的だし、乱暴だし、他人に対して横柄。まるで潜在犯が自暴自棄になったときのそれであった。
それもそのはず、彼はエリートなのではなかった。
九泉はシビュラにより「監視官に就任した初日に、潜在犯であった母親の犯罪係数が規定値を超えたために自ら執行(殺害)したが、その後も職務にまい進する冷徹なエリート」という記憶を植え付けられ、その通りに生かされていたのだ。
それが偽りの記憶だなんて見ている私も知らないから、なんという苦悩を耐えて生きてきたのか。なんという絶望を包括しているのか。彼が潜在犯に辛く当たるのも、近づきすぎると悲劇を繰り返すかもしれない恐怖からなのかもなどと思っていたが、そうではなかった。あの荒々しい性質が、ひょっとしたら彼の本来の気質に近いものだったのかもしれない。或いは、無理に人格を作り替えられたことによって生じたストレスによる反発か。
物語の後半、自分が抱えていた絶望が偽りの記憶であったと知り「母を殺してもエリートとして生きるなんて真似を自ら望んでしていたわけではなかった」と安堵したところだけは、わずかの救いだったように思う。九泉は自分を嫌悪していたのだろう。ひどい男だと責めながら、しかしインプットされたものをアウトプットするよりなくて、苦悩していた。それが自身の本意ではないと知られたのだけはよかった。


嘉納火炉が自身について知ったのはどのタイミングなのだろう?
彼は執行官から監視官になったという特異な経歴を持つとはじめの方で判明する。サイコパスがクリアになることがあるのかと驚きと共に、彼の温厚そうな、慈悲深そうな姿に、そういえばアニメ版の登場人物である宜野座さんも監視官時代より執行官になったときの方が温厚な表情をするようになったという皮肉があるので、そういうこともありえるのかな? 面白い経歴を設定してきたなとのんきに思っていたが、でも彼はサイコパスがクリアになったわけではなく偽造されていたのだ。
しかも、そのことを知っている。分析官とのやりとりから、彼はシュビラの実験、九泉の記憶改ざんについても知っているのがわかる。
いったいそれはいつのタイミングで知ったのか?
初見では、あ、嘉納はシュビラと手を組んでいるんだ、とそっち方面で解釈しちゃったのだけど、よくよく考えると、分析官がそうであったように、嘉納も自力でその事実にたどり着いた可能性もあるんだ。社会復帰できたと喜んでいたのに、途中でひょんなことから実は偽造されていたと知り、また九泉のこと、シュビラの実験を知った。
おそらくこちらが正解なのではないか。
そして、何より罪深いのは、嘉納が真実にたどり着いたことをシュビラは知っていたってことだ。嘉納は自分が真実を知ったことをシュビラが知っているとは思ってなかったのではないか。疑ったかもしれないが、もし知られたなら何かしら動きがあるだろうと考えたのではないか。何もないから気づかれていないと信じていた。しかし、シュビラは真実にたどり着いた嘉納がどう動くかも実験の一つとして観察していたんだ。……いや、ひょっとして嘉納が実験であると気づくことさえも計算ずくで、最初から実験の一部として組み込まれていたのかもしれない。
完全に手のひらで転がされ、いいようにサンプルにされた。
繰り返しになるが嘉納が作中で言う「シュビラは悪ではないが悪質だ」は、嘉納が思う以上に、もっとずっと悪質だったというオチではないか。そんなん、泣くしかない。人を弄びやがって、シュビラー!!! となる。


3係はあの結末しかなかったのだろうか。
なかった気もする。
壊滅後の局長と常守のやり取りを聞いて、やりきれなさがどっと増した。。。
結末はわかっていても、3係で無事に事件を解決して、みんなでわちゃわちゃしている過去話がみたいです。。。

アニメ3期、どうなるんだろう……。